「…もしもし」
細く開いていた部屋の扉を静かに閉めながら、声をひそめて僕はその言葉を口にのせる。
『もしもし…今大丈夫?』
スマホのスピーカー越しに僕の耳に入ってくる織宮さんの声が、いつもより息を含んでいて柔らかい。
「大丈夫」
なんてことない風を装ってそう言ってみる。
だけど閉めたはずの部屋の扉の方がどうしても気になってしまい、色んな意味で落ち着かない。
『よかった…今日の放課後のことなんだけどね』
そうだった。僕は何も言わずに、織宮さんの言葉を待つ。
『家帰って、ちゃんと考えてみた。』
OKの可能性もNOの可能性もあるので、僕は心を極限まで薄くして次の言葉に備える。
『あたしでよかったら、お願いします』



