近くにいるための嘘

「あら、美桜ちゃん、今日はどうしたの」
既に宿題を済ませて、お風呂に入って、髪まで乾かしてる私に、ママが驚いて言う。

「今日、見たい番組があるの。20時から。夜更かしするけど、気にしないで」
「ちゃんと明日の朝、起きなさいよ〜」
「はーい」

19時50分からテレビの前で待機してしまう。
あれから何回も何回もYUTAROくんの動画を見た。
はにかんだ自己紹介、テーマソングの動画。
1人ずつ映した動画は"チッケム"と言うらしい。

PROJECT NOVA(プロジェクト ノヴァ)。
世界中からアイドルを目指す男の子たちが集まる、
視聴者投票でデビューメンバーが決まるオーディション番組。
とりあえず全員の動画を見たけど、
YUTAROくんしか記憶に残らなかった。

オーディション番組なんて、初めて見るから勝手が分からない。
順番に参加者が登場する。
(あ!YUTAROくんだ!)
やっぱり、かっこいい。目が離せない。

最初のクラス分けのためのパフォーマンスが行われる。
(……いつ出てくるんだろう)

他の子のパフォーマンスは目に入らない。
早く、早くYUTAROくんが見たい。

YUTAROくんの番。
知らない曲なのに、歌って踊るYUTAROくんが輝いて見える。
たったの数分。
でもそれは、私を変えるには十分すぎる時間だった。

分けられたクラスは真ん中のクラス。
(……めっちゃ良かったのに)

たまに映るリアクションが可愛くて、
引きの映像でも必死にYUTAROくんの姿を探して、

気付けば、2時間の番組を夢中で見ていた。

……YUTAROくんをデビューさせる。
投票サイトを開いてYUTAROくんに投票する。
つまらなかった毎日に光をくれたのは、
YUTAROくんだった。