好きになった人は、みんなのアイドルで

カランカラン。ドアが開く。
「いらっしゃいませー!」
悠太郎くんだ。

パン研の集まりの後、悠太郎くんには会っていなかった。
(……なんか、勝手に気まずい)

いつものように悠太郎くんはイヤホンを片耳外す。
いつものように、つむぎちゃん、おつかれって言われると思ったのに。
「つむぎちゃんのパン、美味かった」

……え。私のパン、食べたの?

びっくりして何も言えないでいると
「こないだ、パン研のやつ。俺誘われて行ったんだけど、つむぎちゃんのパン食べたよ。めっちゃ美味かった。やばかった。いちばん美味かった。」
「……ありがと」

私のパンなんて、視界にも入ってないと思ってた。
やばい、泣きそう。

「めっちゃ美味かった、あの日言いたかったけどごめん、見つけられなくて」
「ううん、用事あって先に帰ったから」

用事なんて無かった。
あのままいたら、惨めな気持ちになっちゃいそうだったから、先に帰っただけ。

「あ、ごめん、俺めっちゃ喋っちゃった。アイスカフェラテお願いします」
「かしこまりました」

アイスカフェラテを作りながら、さっきの悠太郎くんの言葉を反芻する。
(いちばん美味かった)
あの中で、私のパンが……いちばん?

「お待たせしました、アイスカフェラテです」
「ありがと」
悠太郎くんがカフェラテを受け取る。

「ねえ、また食べに来て」
考えるより先に口に出ていた。
「行く。つむぎちゃんのパン、また食べたい」
笑顔で答えてくれる。
「うん、待ってる」

次は何のパンを焼いていこう。
いちばん美味いって、また言われたいな。