好きになった人は、みんなのアイドルで

学食に行くと、まずゆうたろうくんがいるか探してしまう。
それはやめられない、けど。

皆のゆうたろうくん。
やっぱり引っかかってしまう。

「なーんか、元気無い?」
栞にはなんでもお見通しらしい。
「元気無いわけでは、ないけど」
「けど?なんかあった?」
「いや……」

サークルで聞いたゆうたろうくんの話を話す。
皆のゆうたろうくんって言われてたこと。
名前呼びは特別なんかじゃなかったってこと。
ゆうたろうくんは彼女作る気無いだろうなって言われてたこと。

「なにそれ、もう恋じゃん」
あっさりと栞が言う。

「ねえ、だから違うって……」
なんでこんなに必死に否定してるんだろう。

「だってさ、紬は名前で呼ばれたの、ちょっと特別かもって思ってたんでしょ?」
「うん」
「でも皆にそうだって分かったら、ガッカリしたんでしょ?」
「……うん」
「好きじゃん」
あっけらかんと栞が言う。

「……好き、なのかな」
「分かんないけど、私は話聞いてたらそう思った」

(紬ちゃん、おつかれ。)
ゆうたろうくんの声を思い出す。
この声で、もう一度呼ばれたいと思ってしまった。
……特別に、なりたい、のかな。

「……好き、なのかも」
「恋はね、知らないうちに走り出してるもんなのよ」
栞が名言チックなことを言ってる。

好きって口に出したら、もう戻れなくなる気がした。