秋虫の。


秋の夜長の、


リンリンと。



凛々と、
鳴くスズムシの声は。



ただ


求愛の。



切ない、

羽擦れの



目にも止まらぬ速さで

身体が震えるほどの。



焦がれる声。



命。かけて。



今、
このときだけと。





それにやさしく応えるは、

秋風に吹かれる葉擦れの、
音。