ち、近い。
いや、いつも距離は近いんだけど、
こんなに間近だったことはないかもしれない。
珍しく驚いたような目で、
遼くんがぱちりと瞬きをした。
「ご、ごめん…っ!」
なぜか謝りながら慌てて腕の中から這うようにして逃げ出す。
いつもならあーだこーだ言いながら追いかけてくる遼くんだけど、今日はなぜか追いかけては来なかった。
バクバクとうるさくなる心臓の音がやけに耳に響く。
びっくりした。
びっくりした。
ただ、それだけなんだけど。
早足で廊下を歩くあたしは、まだ下駄箱にいる遼くんがどんな顔をしてたかなんて
知る由もない。
「……遼、お前なんでこんなとこで固まってんの?
てか顔赤いけど大丈夫か?」
「あーーーー………無理、しんどい。
不整脈やばい」
「え、まじでやばそうじゃね?
帰った方がよくね?」
「うるせぇ、なんでお前が顔近づけて来てんだよ可愛くねーんだよ」
「理不尽すぎだろ」
遼くんとそのクラスメイトがこんな会話をしているとは露知らず、あたしは教室へと急いだのだった。
