「おはよ、久原さん」
「おっ……は、ヨォ」
靴箱から上履きを取り出した瞬間後ろから声がして、
肩が跳ねる。
明らかにひっくり返った声、泳ぎまくる目線。
昨日の今日で、宮尾くんと普通に会話出来ない。
人生で初めて誰かから好きだと言われたんだから、無理ないよね?
しかもあんな、ギュッとされながら。
大きな手のひらで肩を掴まれた時のあの感覚を思い出すたび、んあああ!!!!とかうわあああ!!みたいな変な声で叫んでしまう。
そんなあたしと引き換えやけに余裕そうな顔でふっと笑う宮尾くん。
この人あたしに好きだとか言ってきた、よね?
夢じゃないよね?
なんでこんな普通なの?
さっさと廊下を歩いていってしまったその背中をなんともいえない気持ちで見つめた。
「れーちゃん、おはよぉ
可愛い顔してどしたの」
「いっ、ちょっと遼くん!!そうやってやたら密着すんのやめてってば…!」
頭の上にぐりぐりと顎を載せてきたのは振り返らなくてもわかる、遼くんだ。
あたしの目の前にある靴箱に片手をついたこの状態、いわゆる壁ドンってやつ?
怖いんだけど。
「えい」
「うぉ、何すんのれいちゃん
…危ないじゃん」
かっこつけてついていた手を拳で軽くつつくと、ガクンとその肘が曲がってバランスを崩す。
びびってやんの、ざまーみろ。
「べたべたくっついてくるからだよー……」
ニヤニヤしながらその顔を見ようと首を捻ると、
思ったよりも近くにぱっちりとした目が見えて息を呑んだ。
