遼くんは泣き顔がお好き。




「れいちゃん、こんにちは。」

「はいこんにち…じゃなくてなんでまた来たの」


放課後、チャイムが鳴ると同時に廊下に出たあたしを待ち構えていたのはヒョロ長いシルエット。

…美澄遼。

一つ下の階に教室があるはずなのに、どうやってチャイムと同時にここまで来たんだろう。

まさか、待ち伏せてた?

怖い考えが一瞬頭に浮かんだけど首を振ってかき消した。



「今朝はあんま喋れなかったから。
今から暇?俺と遊ばない?」

「暇じゃない。遊ばない。」

「んじゃ連絡先教えて」

「携帯持ってません」

「ポケットからスマホ見えてるよ?」

「……………」


ああ言えばこういう、という言葉はまさにこういうことを言うんだろう。

早足で靴箱に向かいながら横を歩く男にはできるだけ目をやらないように足を動かす。

この子はなんでこんなにあたしに構うんだろう。

昨日初めてあったばかりなのに。


「ねぇ、なんであたしに絡んでくるの?
あんたも暇じゃないでしょう?」

「れいちゃんともっと喋りたいから。」

「だからなんで?なんであんまり知りもしないヤツと喋りたいわけ?」

「知らないから知るために喋りたいって思うんじゃないの、普通」


ごく当たり前のように吐かれた言葉に歩みが止まる。


「…あたしのことなんて知っても面白くもなんともないと思うんだけど」

「面白いかどうかは俺が決めるよ。
でもあの時にわんわん泣いてたヤツ、あれは面白かったから。あれのおかげでれいちゃんに興味持ったの、俺は」


うわーん、って声出して泣く人初めて見た。
そう言って柔らかく笑った顔が、初めて会った時の笑顔とは全く違っていて。

不覚にも、少しだけ見惚れてしまっていた。