引き上げられたはずみで思い切り後ろへ倒れ込む。
慌てて下敷きにしてしまった後ろの人に謝ろうと振り向くと、
眉を寄せてあたしを睨みつける遼くんの顔があった。
「あっぶねぇな!!!ちゃんと前見ないと!!!」
珍しく声を荒らげると、あたしのお腹に回った腕に更に力が入った。
よく見ると、こめかみあたりに薄く汗のあとが伸びている。
…めちゃくちゃ怖い顔。
それなのに、あたしのことを全力で心配してくれているのがよく分かる顔だった。
その顔を見ていると、勝手に目が潤んでいく。
「ご、ごめんね…下敷きにしちゃって、重かったでしょ?」
「…そんなの別にどうでもいい」
ふい、とそらされた視線に静かに傷つく。
だけどあたしには傷つく資格すらないのかもしれない。
あの日、遼くんが電話をくれた日から一度も連絡しなかったのはあたしなんだから。
「…遼くん、」
「………なに」
言いたいことがいっぱいあった。
宮尾くんとは付き合ってるとかそんなんじゃないこと。
遼くんと一緒に居ると、最近そわそわしてしまって前みたいな態度でいられないこと。
ずっと連絡しようと思ってたのに、なんて連絡していいかわからなくて結局できなかったこと。
だけどそんなことはもうどうでもよくて、
ただ一言だけ口からこぼれた。
「…遼くんだぁ…」
「…っ、何それ」
「電話した日からずっと、遼くんの顔見たくて…っ
やっと顔見て話せた…!」
たどたどしいあたしの言葉を聞いた瞬間、
遼くんはひゅっ、と短く息を呑む。
そのまま縋りつくように大きな身体が覆い被さってきて、
あたしの視界は真っ暗になった。
