遼くんは泣き顔がお好き。



ごめんごめん、なんて本当に思ってるのか分からない軽い口調でいいながらあたしの手を引っ張った遼くんは、
なんとそのままあたしの身体を小脇に抱えて歩き始めた。


「え、ちょっと?!!何?!」

「誘拐しようと思って」

「ゆうかい?!!ちょっとまじで110番するよ?!」

「ジョーダンだよジョーダン、どんだけ俺信用ないわけぇ?傷つくなあ」

あながち冗談でもなさそうだから困る。

荷物みたいに片手で抱えられたあたしと遼くんの姿を見て、みんなぽかんと口を開けたままフリーズしてしまっていた。

「おい!何すんだよ!」

珍しく眉間に皺を寄せた宮尾くんが遼くんの肩を乱暴に掴む。
遼くんに抱えられたままのあたしもつられて大きく傾いて、このまま落とされるんじゃないかと冷や汗がじわりと噴き出した。


「何って、着替えないとでしょ?
俺体操服持ってるから貸してあげよーと思って」

「なんでそんな、抱えていく必要があるんだよ!!
降ろせよ!!」

「ギャンギャンうるさいなぁ…」


はぁ、と小さなため息をついた遼くんはあたしを抱え直すと、ぐっと身体に力を込めた。

次の瞬間、ぐらりと視界が傾いて思わず悲鳴が溢れる。


「っ、うわ!!!!」

あたしを抱えたまま走り出した遼くんは、あっという間にみんながいた場所から離れていく。

宮尾くんが何か言っていた気がしたけど、
それもあっという間に聞こえなくなった。