でも、次の瞬間には、体の奥から黒いものがせり上がってきた。
無理だ。
俺は起き上がることもできない。
廊下まで歩くだけで息が切れる。
春まで生きられるかもわからない。
王子様どころか、明日の朝さえ約束できない。
「……もう、疲れた」
気づいた時には、声が出ていた。
向日葵の笑顔が止まった。
「太陽くん?」
「痛いのも、苦しいのも、もう嫌だ。母さんが泣くのも、向日葵が無理に笑うのも嫌だ」
喉が震えた。
言ってはいけない言葉だと、わかっていた。
それでも止まらなかった。
「死にたい」
病室の空気が、凍った。
向日葵の目から、涙が落ちた。
彼女は椅子を倒しそうな勢いで立ち上がって、ベッドにしがみついた。
小さな手が、点滴の管に触れないように、必死に俺のシーツをつかむ。
「やだ」
震える声だった。
「やだよ、そんなの」
俺は目を逸らそうとした。
でも、向日葵は逃がしてくれなかった。
泣きながら、怒った顔で、俺を見た。
「生きてよ! 私のために!」
その言葉は、病室の白さを破って、まっすぐ俺の胸に刺さった。
その時の俺には、自分の命に価値があるなんて思えなかった。
母さんを苦しめるだけの体なら、もう終わってもいいと思っていた。
なのに、向日葵は言った。
私のために、と。
そんなわがままな言葉を、誰も俺にくれなかった。
「向日葵のため?」
「そうだよ!」
彼女は涙でぐしゃぐしゃの顔のまま、何度もうなずいた。
「太陽くんがいないと嫌だよ。学校帰りに一緒に帰れないのも、公園で遊べないのも、プリン半分こできないのも嫌だよ」
俺は、どうしようもなく泣きそうになった。
「もし」
声がかすれた。
「もし生きのびれたら、もし王子様になれたら、俺と結婚してほしい」
向日葵は一瞬だけ固まった。
それから、何かを決めたみたいに俺の手を握った。
小さくて、あたたかい手だった。
「うん。約束するから。だから、死んじゃ嫌だよ」
無理だ。
俺は起き上がることもできない。
廊下まで歩くだけで息が切れる。
春まで生きられるかもわからない。
王子様どころか、明日の朝さえ約束できない。
「……もう、疲れた」
気づいた時には、声が出ていた。
向日葵の笑顔が止まった。
「太陽くん?」
「痛いのも、苦しいのも、もう嫌だ。母さんが泣くのも、向日葵が無理に笑うのも嫌だ」
喉が震えた。
言ってはいけない言葉だと、わかっていた。
それでも止まらなかった。
「死にたい」
病室の空気が、凍った。
向日葵の目から、涙が落ちた。
彼女は椅子を倒しそうな勢いで立ち上がって、ベッドにしがみついた。
小さな手が、点滴の管に触れないように、必死に俺のシーツをつかむ。
「やだ」
震える声だった。
「やだよ、そんなの」
俺は目を逸らそうとした。
でも、向日葵は逃がしてくれなかった。
泣きながら、怒った顔で、俺を見た。
「生きてよ! 私のために!」
その言葉は、病室の白さを破って、まっすぐ俺の胸に刺さった。
その時の俺には、自分の命に価値があるなんて思えなかった。
母さんを苦しめるだけの体なら、もう終わってもいいと思っていた。
なのに、向日葵は言った。
私のために、と。
そんなわがままな言葉を、誰も俺にくれなかった。
「向日葵のため?」
「そうだよ!」
彼女は涙でぐしゃぐしゃの顔のまま、何度もうなずいた。
「太陽くんがいないと嫌だよ。学校帰りに一緒に帰れないのも、公園で遊べないのも、プリン半分こできないのも嫌だよ」
俺は、どうしようもなく泣きそうになった。
「もし」
声がかすれた。
「もし生きのびれたら、もし王子様になれたら、俺と結婚してほしい」
向日葵は一瞬だけ固まった。
それから、何かを決めたみたいに俺の手を握った。
小さくて、あたたかい手だった。
「うん。約束するから。だから、死んじゃ嫌だよ」



