この日を境に、私は徹底的に稔さんを避けた。もともと空港ではほとんど顔を合わせることはなく、連絡がきても返信しなかった。
そして退職してアメリカに渡る際にスマホを変更し、彼の連絡先を消去した。
そうやって新天地で夢と希望を胸に仕事を始めた。覚えることで精いっぱいで、大変なことのほうが多いけれど、グローバルな職場での仕事は思いのほか楽しくて、転職して良かったと思えた。
でもそれも数週間だけ。……ある日、フライト中に急な吐き気がして戻してしまった。さらには勤務ができないほどの眩暈も起こした。
目的地に到着後、そのまま医師の診察を受けた私に告げられたのは、妊娠しているという事実だった。
「どうしよう……」
ステイ先のホテルの一室で、渡されたエコー写真を見ながら結論が出ずにいた。
エコーに写っているのは、なんと複数の命だった。まだはっきりしないが、もしかしたら双子か三つ子の可能性があると言われた。
ひとりでも大変なのに、もし三つ子だったらどうする? しかもこんなタイミングで。
でも不思議とおろすという選択肢はなかった。悩んでいるのはひとりで幸せに育てることができるか、そして稔さんにこの子たちのことを伝えるかどうかだ。
慣れない土地より、医療費の面からも退職して日本で出産するべきだ。でもひとりでどうやって? 父はすでに再婚済みで音信不通状態。
ほかに頼れるとしたら……浮かんだのは、伯母夫婦といとこの存在。いつもなにかと私を気にかけてくれて、母の死後も数ヵ月置きに連絡をくれた。
もしかしたら助けてくれるかもしれない。それに伯母たちが住んでいるのは福岡県。稔さんに叔母夫婦の存在を話したことはなかったから、場所を知られることはないはず。
稔さんには、やはり打ち明けないべきだよね。その理由は彼が結婚には慎重だったからだ。
もちろんそれには理由がある。母子家庭で母親の苦労する姿をずっと見てきたからこそ、家族を守るためにも一人前になってから結婚すると決めていると聞かされていた。
だから稔さんは私の夢を応援してくれたし、結婚はお互いが一人前になってからにしようと言われていた。
そんな彼に妊娠を告げたら? それも双子か三つ子かもしれないと言ったら?
まだ副操縦士にもなっておらず、私の夢を応援してくれていた稔さんなら、もしかしたら今は諦めようと言うかもしれない。
その可能性がある以上、生みたいのに妊娠のことなど伝えられるはずがない。
エコー写真に映る命をそっと指で撫でる。
「私のもとに来てくれたのは、私が寂しくないようにかな?」
そして退職してアメリカに渡る際にスマホを変更し、彼の連絡先を消去した。
そうやって新天地で夢と希望を胸に仕事を始めた。覚えることで精いっぱいで、大変なことのほうが多いけれど、グローバルな職場での仕事は思いのほか楽しくて、転職して良かったと思えた。
でもそれも数週間だけ。……ある日、フライト中に急な吐き気がして戻してしまった。さらには勤務ができないほどの眩暈も起こした。
目的地に到着後、そのまま医師の診察を受けた私に告げられたのは、妊娠しているという事実だった。
「どうしよう……」
ステイ先のホテルの一室で、渡されたエコー写真を見ながら結論が出ずにいた。
エコーに写っているのは、なんと複数の命だった。まだはっきりしないが、もしかしたら双子か三つ子の可能性があると言われた。
ひとりでも大変なのに、もし三つ子だったらどうする? しかもこんなタイミングで。
でも不思議とおろすという選択肢はなかった。悩んでいるのはひとりで幸せに育てることができるか、そして稔さんにこの子たちのことを伝えるかどうかだ。
慣れない土地より、医療費の面からも退職して日本で出産するべきだ。でもひとりでどうやって? 父はすでに再婚済みで音信不通状態。
ほかに頼れるとしたら……浮かんだのは、伯母夫婦といとこの存在。いつもなにかと私を気にかけてくれて、母の死後も数ヵ月置きに連絡をくれた。
もしかしたら助けてくれるかもしれない。それに伯母たちが住んでいるのは福岡県。稔さんに叔母夫婦の存在を話したことはなかったから、場所を知られることはないはず。
稔さんには、やはり打ち明けないべきだよね。その理由は彼が結婚には慎重だったからだ。
もちろんそれには理由がある。母子家庭で母親の苦労する姿をずっと見てきたからこそ、家族を守るためにも一人前になってから結婚すると決めていると聞かされていた。
だから稔さんは私の夢を応援してくれたし、結婚はお互いが一人前になってからにしようと言われていた。
そんな彼に妊娠を告げたら? それも双子か三つ子かもしれないと言ったら?
まだ副操縦士にもなっておらず、私の夢を応援してくれていた稔さんなら、もしかしたら今は諦めようと言うかもしれない。
その可能性がある以上、生みたいのに妊娠のことなど伝えられるはずがない。
エコー写真に映る命をそっと指で撫でる。
「私のもとに来てくれたのは、私が寂しくないようにかな?」



