別れたはずのママとパパは、愛しの三つ子ちゃんに振り回されています

「いいえ、本心です」
 嘘を見破られないために間髪を容れずに言う。
「いや、嘘だ。那奈が俺を邪魔に思うはずがない」
 確信を得た目で言われ、ドキッとなる。
「きっとなにか事情をあるんだろ? だから待つよ。……那奈が夢を叶えたら必ず迎えに行く」
「なにを言って……」
「俺が簡単に那奈を諦められると思ったのか? 悪いけど俺、那奈のこと一生離してやれない。……それほど愛されているとわかっているだろ?」
 恋人になってから、稔さんは溢れるほどの愛情を注いでくれた。それが嬉しくて幸せで、嫌というほど理解している。
 理解しているからこそ、私も大好きな稔さんに幸せになってほしい。……そしてなにより、母のようにこの先、彼に愛されなくなった日がくるかもしれないと思うと怖くてたまらない。
 ずるいと思う。結局逃げるのだから。でもこの日の決断を後悔しない時がくると信じたい。
「稔さんの気持ちが重荷でしかないんです。私の夢を応援してくれるなら、このまま別れてください」
 心にもないことを言った後、彼のひどく傷ついた顔を見て胸が痛む。でもこれできっとわかってくれたはず。
「もう連絡はしてこないでください。……ここで大丈夫ですので、お先に失礼します」
 他人行儀のように冷たく言い、改札口を抜けようとした時。
「それでも俺は約束を守る。……ずっと待ってるし、必ず迎えに行くから」
 背後から聞こえてきた声に足が止まりそうになるも、早くこの場から去ろうと自分に言い聞かせて足早に去っていく。
 彼が追いかけてくる気配はなく、ちょうどホームに到着した電車に飛び乗った。
 そして電車が走り出したところで、我慢ができなくなり涙が溢れた。
 これでよかったんだよね? 別れることがお互いのためによかったんだ。そう自分に言い聞かせないと稔さんの傷ついた顔が浮かんで、さらにつらくなる。
 悲しいのは今だけ。新しい場所で新生活を始めたら毎日が忙しくてきっと彼のことは忘れられるはず。
 そしてこの時の決断が正しかったんだと思えるよう、憧れの航空会社で頑張ろう。だから今日だけはいっぱい泣いてもいいよね。
 周囲の人の目を気にする余裕もないほど悲しみが押し寄せ、家に着いてからも涙が止まることはなかった。