「稔さん、私……来月いっぱいで退職して海外の航空会社へ転職することにしました」
「来月いっぱい?」
久しぶりに仕事終わり、ふたりで食事を済ませた帰り道。最寄り駅まで並んで歩きながら切り出した。
「ちょっと待ってくれ、ずいぶん急だな」
寝耳に水の話に、稔さんは戸惑っている様子。それもそのはず、転職に関していっさい相談していなかったから。
ちょうど最寄り駅に到着し、私は改札口前で足を止めた。
「那奈?」
彼もまた不思議そうに私を見ながら立ち止まる。
たくさん考えて出した答えだ。後悔しないって納得できたはずなのに、いざ本人を前にすると心が揺らぐ。
だって私、すごく稔さんのことが好きだもの。この先も嫌いになれる自信なんてないのに……。
だけどすぐに福本さんに言われた言葉を思い出す。
先日、稔さんと別れて海外の航空会社に転職することを伝えた。彼女は大喜びをして、さっそく父親に口利きすると言ったが、丁寧に断った。
働く場所は自分で決めたい。それに以前から転職先に考えていた航空会社で、タイミングよく求人が出たため、すぐに応募して見事に中度採用で内定をもらうことができた。
稔さんの将来について、福本さんは自分に任せてと言っていた。……稔さんだって時間が経てば、福本さんのことを好きになるかもしれない。
そう自分に言い聞かせて、私の様子を窺う彼を見つめる。
「稔さん、私と別れてください」
「……え?」
大きく目を見開いた稔さんに、考えた別れの理由を伝えていく。
「お互い夢を叶えるためにも、別れるべきだと思うんです」
「なにを言ってるんだ? 別れなくたっていいだろ?」
焦り出す稔さんに、さらに続ける。
「いいえ、別れるべきです。……正直、海外での生活に不安があります。私、自分のことで精いっぱいで稔さんのこと、なにひとつ気にかけてあげられる自信がないんです」
「そんなの気にしなくていい。俺は……っ」
「私が嫌なんです!」
言葉を遮って言うと、稔さんは目を見開いた。
「それに、夢を叶えるためには稔さんの存在が邪魔なんです」
ううん、違う。本当は邪魔だなんて思っていない。でも、こうでも言わなければ彼は納得してくれないはず。
心が引き裂かれるほどつらいけれど、必死に涙をこらえる。
「だから私と別れてください」
もう一度伝えると、稔さんは悲しげに瞳を揺らした。
「それは、那奈の本心じゃないよな?」
「来月いっぱい?」
久しぶりに仕事終わり、ふたりで食事を済ませた帰り道。最寄り駅まで並んで歩きながら切り出した。
「ちょっと待ってくれ、ずいぶん急だな」
寝耳に水の話に、稔さんは戸惑っている様子。それもそのはず、転職に関していっさい相談していなかったから。
ちょうど最寄り駅に到着し、私は改札口前で足を止めた。
「那奈?」
彼もまた不思議そうに私を見ながら立ち止まる。
たくさん考えて出した答えだ。後悔しないって納得できたはずなのに、いざ本人を前にすると心が揺らぐ。
だって私、すごく稔さんのことが好きだもの。この先も嫌いになれる自信なんてないのに……。
だけどすぐに福本さんに言われた言葉を思い出す。
先日、稔さんと別れて海外の航空会社に転職することを伝えた。彼女は大喜びをして、さっそく父親に口利きすると言ったが、丁寧に断った。
働く場所は自分で決めたい。それに以前から転職先に考えていた航空会社で、タイミングよく求人が出たため、すぐに応募して見事に中度採用で内定をもらうことができた。
稔さんの将来について、福本さんは自分に任せてと言っていた。……稔さんだって時間が経てば、福本さんのことを好きになるかもしれない。
そう自分に言い聞かせて、私の様子を窺う彼を見つめる。
「稔さん、私と別れてください」
「……え?」
大きく目を見開いた稔さんに、考えた別れの理由を伝えていく。
「お互い夢を叶えるためにも、別れるべきだと思うんです」
「なにを言ってるんだ? 別れなくたっていいだろ?」
焦り出す稔さんに、さらに続ける。
「いいえ、別れるべきです。……正直、海外での生活に不安があります。私、自分のことで精いっぱいで稔さんのこと、なにひとつ気にかけてあげられる自信がないんです」
「そんなの気にしなくていい。俺は……っ」
「私が嫌なんです!」
言葉を遮って言うと、稔さんは目を見開いた。
「それに、夢を叶えるためには稔さんの存在が邪魔なんです」
ううん、違う。本当は邪魔だなんて思っていない。でも、こうでも言わなければ彼は納得してくれないはず。
心が引き裂かれるほどつらいけれど、必死に涙をこらえる。
「だから私と別れてください」
もう一度伝えると、稔さんは悲しげに瞳を揺らした。
「それは、那奈の本心じゃないよな?」



