別れたはずのママとパパは、愛しの三つ子ちゃんに振り回されています

 言葉が出ない私に対し、福本さんはさらに私との距離を縮めて耳元で囁いた。
「こんなことを言いたくないけど、父って私のことがすごく大好きなの。そんな私が言えば、どんな願いも叶えてくれるわ。……たとえば、大嫌いなあなたを客室乗務員業務から外すことだって、ね」
「な、にを言って……」
 顔を強張らせる私を見て、福本さんは笑みを零す。
「やだ、例えばの話よ」
 彼女はそう言っているが、目が本気だ。きっと私が稔さんと別れない限り、強硬手段に出てくる。それこそ自分の父親の権力を使って。
「これも例えばの話だけど、親友の平林さんが海外の航空会社に転職したいって言ったら、父はいい航空会社を紹介してくれるはずよ」
 これは交換条件を突きつけられているのだろうか。素直に稔さんと別れるなら、その見返りとして転職先を斡旋してくれるってことだよね?
「瀬戸さんとあなたの将来をよく考えてから返事をちょうだい」
 そう言って福本さんは颯爽と去っていった。バタンとドアが閉まる音がしても、動けない。
 稔さんと別れるつもりなんてなかった。夢を叶えるために離れたって、彼とはずっと繋がって入れると思っていたけれど、本当にそれが正しいの?
 稔さんの将来を考えたら、絶対に福本さんと一緒になったほうがいいに決まってる。それに私が海外へ行って離れても、本当に彼の気持ちは変わらない?
 疑いたくないけれど、両親だって最初はお互いが好きで結婚したのに、気持ちは冷めてしまった。
 父は母と夫婦の時に浮気をして、その相手と再婚した。……やっぱり永遠に続く気持ちなんてないのかもしれない。
 母のように傷つきたくない。だって母はいつも悲しそうだった。父と結婚してよかったのは、私ができたことだけだと言っていたくらいだ。
 それならいっそ、お互いのためにもまだ傷が浅いうちに、別れを選ぶべきなのかもしれない。
 頭ではそう理解できたけれど、気持ちは追いつかない。この日から私はずっと自分と稔さんの幸せについて頭を悩ませた。
 そして、答えが出たのは一ヵ月後のことだった。