腹黒ドクターの独占欲は、傷心MRを離さない

「実は妻もおしゃべりに行ってしまって、僕も休憩しようと思っていたところでした。ここから出たところに談話スペースがあるんです。よろしければ取り残され者同士、仲良くおしゃべりしませんか?」
「はぁ……」

ふたりきりになるのは気が引けたし、一真さんに何も告げずにいなくなるのはよろしくない。
でも片山さんの気遣いを断るのも気が引けた。
そこに「一真との思い出話でも聞いてください」と追い打ちをかけられれば、傾いてしまう。

「では少しだけ」

私たちは談話スペースに行った。
落ち着ける場所とあって人目に付きにくい場所にあったけれども、さすがの私も気疲れがたまっていたので、ほっとする。

「先ほどの妻の失言、失礼しました」
「いえ。人違いをされたようで……」
「ええ。あなたと一真はもう婚約されてます。もう時効でしょうから正直申し上げますが、清那さんに出会う以前、一真に婚約の話が来ていたんです。お相手は日田総合医療病院の令嬢です」

やっぱり……あの人なんだ。

「しかし、一真はまったく関心を示せなかった。後ろ盾やなんかに頼って上に行きたくない。経験と実績を積んでふさわしい者として自分でたどり着きたいとね」

思わず胸がときめく。
やっぱり一真さんは医師として人間として素晴らしい人だ。