腹黒ドクターの独占欲は、傷心MRを離さない

彼は目を見張り、私の顔を見つめている。
泣き顔、見られた。
そう焦った瞬間、私の声に気づいたのか広士たちが近づいてくる気配がした。
とっさに先生が私の手をつかみ、近くの空き部屋に一緒に滑り込んだ。

数秒後、遠ざかる足音が聞こえた。
どうやら気づかれずにすんだみたいだ。
私は慌てて涙をぬぐい、小さな声で言った。

「す、すみません。ありがとうございました……でも、どうして先生がここに?」

彼は無言で一枚の書類を掲げた。
私がさっき見せた新薬の資料だった。

「まだ公表前の商品だろ。……機密情報、忘れるな」
「あっ……す、すみません!」
「しっかりしてるけど、意外と抜けてるよな」

いつもの調子で言いかけ、少しだけ言葉を飲み込む。
どうやら、会話を聞いてしまったらしく、状況をよく理解しているようだった。

「……恥ずかしいところをお見せして、すみません」
「もしかして、きみの婚約者って今の……」
「……はい」

鷹宮先生は息を飲み、かける言葉を探すように少し押し黙った。