腹黒ドクターの独占欲は、傷心MRを離さない

「あ、あの、もう少ししたらめどがつくんで――んっ」

戸惑い気味に振り向いた彼女にキスをした。

「……あまりつれないなら、職場でもしていいか、キス?」
「こ、困ります」
「どうして? 婚約中なのに」

またキスをする。
顔を真っ赤にしている彼女は、唇まで震えていた。
可愛い。
でもちょっと反省。やりすぎた。
俺もこのままでは自制できなくなりそうだった。

付き合いはじめてまだまだ浅い。
清那と深い関係になるのは、慎重に行こうと決めていた。
年上の男として、性急になっている姿を見せたくないし、何より、彼女は前回の恋で深く傷ついている。
少しずつ関係を成熟させていって、そのあかつきに彼女が俺を受け入れる気持ちになってもらうのが望ましい。
それに彼女は、現にこうして忙しい。貴重な休日に体を疲れさせたくない。
彼女がこうして頑張ってくれて、俺はその恩恵をたくさん受けてこられたのだから。

「君のその頑張りを見ていると、俺たち医者だけが患者の命を救っているんじゃないって実感させられるよ。ありがとう」
「いえ、私たちの力なんて微力なものです。でも嬉しいです、ありがとうございます」

俺は彼女の頭をなでると「ちょっと待ってて」と言い残してキッチンに行った。
しばらく作業すると、清那のそばにマフィンとコーヒーを運んだ。