腹黒ドクターの独占欲は、傷心MRを離さない

退室したとたん、足が震えてしまった。
先生がすかさず抱き留めてくれる。
人がいないスタッフルームを見つけて入ると、椅子にそっと座らせてくれた。

「……大丈夫か?」
「はい、大丈夫です。いろいろとありがとうございます」

笑顔を作って見せる。けれども私を気遣おうとする先生のまなざしはかわらない。

「無理をするな。……でも、頑張ったな」

その言葉を聞いた瞬間、張りつめていたものがぷつりと切れた。
堰を切ったかのように涙が次々と零れ落ちるのを、抑えられなかった。
先生は黙ってテーブルにあったティッシュで頬をぬぐってくれた。

「……ごめんなさい」
「多田先生はいろいろと噂のある先生だからな。余計なお世話だとわかっていたけれども心配で様子をうかがいに行ったら君の声が聞こえて……怖かっただろう?」

医療の世界はまだまだ封建的なところが多く、女性が差別されることはよくあることだ。
そういう世界で男性と対等に渡り歩こうとする女性はみんなそれなりの覚悟を持っている。
まわりだってそういう女性にいちいち配慮はしない。