腹黒ドクターの独占欲は、傷心MRを離さない

「どうせ医者を狙うんだったら、私の息子を紹介したのに。鷹宮ほどではないが、私に似て外見はいい方だ。私も君のような美人な娘ができればうれしいのだがな」

その口ぶりは冗談めいてはいなかった。
どうせ医者の妻になるのなら、鷹宮先生から自分の息子に乗り換えろ、と迫っている気がした。
あまりの横暴ぶりに絶句せざるをえないが、私は言葉を絞り出した。

「せっかくですが、そのようなお話しには……」
「悪い話ではないと思うんだがなぁ。会社に使われるだけの君も、大きな顔ができるというものだろう。薬なんてどこも同じなんだから、MRなんてやるなら、女ならではの武器を使わないと」

一瞬息が止まり、思考が停止した。
資料を投げつけてやりたいのを、かろうじて抑え、こみあげてきた涙も必死にこらえた。

以前の私なら、逃げるように退室してトイレに駆け込んで泣いていたかもしれない。
でも様々な先生に鍛えられてきた今は、怒りと悲しみを冷静に整理できる。
私や医薬の発展に尽力している人々への愚弄は、しかるべき態度で非難すべきだ。

「公私混同はお控えください。医師ともあろう方が薬剤への信頼を持たずして患者を救えるのですか?」
「な……っ」
多田先生は驚き、すぐに顔を真っ赤にする。