腹黒ドクターの独占欲は、傷心MRを離さない

彼の担当になってしばらくたつけれども、この不気味な視線はどうも慣れない。
視線だけではなく「意外に胸は大きいんだな」とか「私と会うときはジャケットを脱いでほしい」などと、信じられない発言を受けたこともあった。
上司に相談したこともあったが「あの先生はああだから。看護師たちも困っているらしい」とだけで流された。
「おおごとになった話は聞かないが、もし身の危険を感じたら言ってくれ」とは言われているけれども、身の危険が起きてからでは遅いではないか。

でも私の立場は弱かった。
ここまで苦労して日田総合医療病院の先生たちからの信頼を得たのに、ひとりの先生のためにそれを無駄にするのではと思うと強い態度がとれなかった。
早々と説明を終えると、退室しようと腰を上げる。
すると先生は尊大な口調で話しかけてきた。

「そういえばきみ、結婚するんだって?」
「え、あ、はい」

小さく笑ってうなずくと、先生はにやにやと笑った。

「相手はあの鷹宮だとか。真面目そうな顔して、案外やり手なんだな?」

ぞっとするほど下卑た言い方だった。
さすがにカチンときたものの、言い返すことはできない。