腹黒ドクターの独占欲は、傷心MRを離さない

それから、私は意識的にメッセージのやり取りを控えるようになった。
今まではすぐに返信していたけれど、未読のまましばらく置いて気づかないふりをし、遅めに返す。

本当は、これまでどおり、先生と楽しく会話をしたかった。
けれど、千葉先生を訪問したあとから芽生えた、あのもやもやとした感情が、それを許してくれなかった。

これ以上、惹かれてはいけない。

自分に言い聞かせるように、距離を取っていた。

そんな中、日田総合医療病院を訪れた。
朝から気持ちが重かった。
今日会う予定の先生は、私が以前から苦手としている人物だ。

エントランスを抜けたその時だった。
ばったり、鷹宮先生と目が合った。
一瞬、時間が止まったような気がした。

「久しぶり」

弾けるような笑顔を向けられ、思わず胸がきゅっと鳴る。

「お久しぶりです。……あの、すみません、今日はもう行きますね。多田外科部長にお会いする予定なんです」

その名前を出すと、先生の表情がわずかに変わった。
多田外科部長はこの病院の外科系を束ねるトップで、五十をとうに越えた老練な医師。
院内だけでなく、医療業界全体にも影響力を持つ人物だ。