腹黒ドクターの独占欲は、傷心MRを離さない

それにしても、婚約話がここまで浸透していたのには焦らされる。
ますます逃げ場がないではないか。

耳鼻咽喉科から出ると、とうの鷹宮先生が、涼しい顔で私を待っていた。
どうだった? とでも言いたげな顔だ。
私は思わず恨めしげな顔をした。

「先生、なんだか大げさなことになってますけれども……」
「大げさじゃない。ちょっと圧をかけただけだろ」
「このままじゃ本当に先生と結婚しなくちゃいけないみたいじゃないですか……!」
「うん。それが目的だけど?」

ふっと口角を上げたその顔には、計算づくの笑みが浮かんでいた。
この腹黒医師!
と叫びたいのを抑える私を、先生がご機嫌な顔でのぞきこむ。

「怒った? 初めて見たけど、怒った顔もきれいだな」
「もう! 先生ってば!」

すれ違う看護師さんが、ほほえましく私たちを見てくる。
これはもう、本当に逃げ場がない。
どうしたらこの猛攻からのがれられるの?