腹黒ドクターの独占欲は、傷心MRを離さない

「前の男のことを忘れさせるためだから。メッセージを送れば、その間は俺のことしか考えられなくなるだろ?」

どきっと胸が高鳴った。
確かに、どう返事すればいいか悩んでいる間は、広士のことを忘れていた。
ひとりの夜になると、私が広士のことを思い出して泣いていたことに、先生は気づいていたみたいだ。
きゅうと胸が締めつけられる。

「ありがとうございます……。先生もお忙しいのに、面倒をおかけして……」
「好きな子にメッセージを送るのに、面倒なわけないだろ」

からかうように言うと、先生は少し声を落とした。

「本当は、もっと送りたいの我慢してるんだ。全然返してくれなくて、つれないから。でもやっぱり、こうして会うのが一番うれしいな」

顔を火照らせて言葉に詰まる私に、先生はくすりと笑いかけた。
エレベーター到着音が鳴る。救いの鐘のように聞こえた。

「……じゃあ、私はここで」

逃げるように出ようとしたその時、先生の左腕が私の行く手を阻むようにドアを押さえた。

「でも、たまには返事ほしいな。『おはよう』だけで、その日一日頑張れるから」
「……は、はい」

顔を真っ赤にしてうなずく。
腕がゆっくりと下りた。

ようやく、大きく息が吸えた。けれども、胸はいつまでも苦しかった。
私を引き留めたときの先生の顔からは、笑顔が消えていた。
真面目だけれども、どこか焦れているようにも見えるあの表情を何度か目にしたことがあった。
私の返答や提案が、期待にそぐわなかった時だ。
先生は本当に私のメッセージを心待ちにしているんだ……。