腹黒ドクターの独占欲は、傷心MRを離さない

「既読はつけてくれているし十分だ。それにデートに誘うなら、直接の方がOKもらえそうな気がするし」
「……すみません。今は仕事中なので、お返事はあとで」

私は動揺を押し隠して、無理やりさらっと流した。

「こちらは先日お話しした新薬のサンプルになります。ご確認いただけますか」
「うん、ありがとう。ちなみに、このあとの予定は?」

やはりそう来たか。
でもごまかすわけにもいかない。

「この後は耳鼻咽喉科にもサンプルをお渡しに行って、ご説明させていただく約束となってます」
「そうか。じゃあ俺も途中まで一緒に行くよ」

内心悲鳴を上げたものの、私は作り笑いを浮かべてうなずくしかなかった。
こうして私の目論見は見事破綻した。

エレベーターにふたりで乗り込み、右側に先生。その少し左後ろに私。
広いはずのエレベーターが、やけに息苦しい。
ふたりきりのこの状況に耐えきれず、何か会話して気を紛らわせることにした。

「……あの、メッセージ、返せなくてすみません」
「いいよ。返事が欲しくて送ってるわけじゃないから」

どういう意味だろう。
先生はたくらむような微笑みを浮かべた。