腹黒ドクターの独占欲は、傷心MRを離さない

先生が指定した時間に伺うと、今日の診察はすべて終わっていた。

急患がはいらなければ時間はいくらでも取れるとのことだった。
以前は面談時間をきっちり区切られていたけれども、これも最近変わった事態だ。
こちらとしてはリラックスしてお話しできるのでありがたい。
けれども毎回カフェに誘われるようになったのは、ちょっと戸惑う。

商談を交えての軽食程度なら、お客様と飲食を共にしても問題ない。
カフェと言ってもコーヒーメーカーから自分で入れる程度の施設だし、おごりあうわけでもないので差しさわりもない。
でも先生は、商談がすむとお互いの日常のことにまで及んで会話を広げるようになった。
おかげで好きな食べ物とか休みの日の過ごし方とか、先生のプライベートなことをだいぶ詳しくなってしまった。

普段の勤勉な姿とは打って変わり、仕事を離れた先生は驚くほど話し上手で、つい会話が弾んでしまう。
今日も、最近流行っている医療ドラマの話題で盛り上がった。

「意外でした。先生も医療ドラマをご覧になるんですね」
「うん。患者さんに好きな人が多いからね。コミュニケーションの一環として、たまに見るんだ」
「ドラマを通して、医療の仕事を理解してもらえるのはありがたいですね」
「そうだな。ただ……医者の家があんなにおしゃれなのは、さすがにリアルじゃないけどな」
「そうなんですか? 先生のお部屋、素敵そうですけど」
「全然だよ。寝に帰るだけだから殺風景だよ。……何なら今度見に来る?」