腹黒ドクターの独占欲は、傷心MRを離さない

「君はよく頑張ってきた。だから今だけは甘えてくれ、俺に……」

気付けばそんな言葉を口にしていた。
ひとしきり泣いた後、彼女は小さな声で言った。

「新人の頃から切磋琢磨してきた仲だったんです。何かの間違いであってほしいって思ったけど……直接あんな言葉を吐かれてすっきりしました。あんな男と結婚しなくてラッキーでした」

そんな言葉、まだ本心ではないのはしおれた声でわかる。
しかし彼女は健気に笑顔を作った。
こんなところもいじらしく思えて、胸が高鳴る。
同時に、彼女をこれほどにかき乱すのが俺以外の男だと思うと、じりと胸がひりつくのも感じた。
参ったな……とこの瞬間、はっきりと気づいた。
彼女を恋愛対象として見始めた自分に。




最後の患者は、数か月前に大きな手術をした高齢の女性だった。

「……うん。経過はいいですね。もう少ししたら、通院も必要なくなりますよ」
「ありがとうございます。先生のおかげです」

彼女は何度も頭を下げ、ほっとしたように微笑んだ。