腹黒ドクターの独占欲は、傷心MRを離さない

「……恥ずかしいところをお見せして、すみません」

消え入りそうな彼女の声を聞くと、激しい怒りが込み上げた。
神聖な医療の現場で、卑劣な行為を働くこと自体が許し難いし、その場所でひたむきに努力を重ねてきた彼女の心を踏みにじったことも、どうしても許せなかった。

会社に訴えれば簡単だったが、それでは彼女にも根も葉もない疑いがかけられる危険があった。
それに、ああいう自信過剰な男は、プライドを傷つけられることが一番こたえるはずだ。

そうして俺が思いついた、騙していた相手から逆に騙されていたと思い知らせる作戦は、うまくいった。
不安で青ざめたり、怒りで赤くなったりとせわしない婚約者の様子は、なかなか滑稽だった。
これで院内で悪事を働かれることもないし、彼女の体裁も保つことができたと勝手に満足していた。

しかし、彼女が俺の腕の中で頼りなく泣きじゃくりはじめて、動揺した。
そこで俺はやっと気づいた。
俺にとってはただ卑劣な男を懲らしめただけ。
でも彼女にとっては、愛した相手を完全に失った瞬間だったのだと。

涙を拭う仕草はひどく無防備で頼りなげで、胸が締め付けられた。
明るく強い子だと思っていたこの子にも弱さがあって、辛くて泣く日があった。
それをあの男が調子のいい態度で慰めていたのだ。
今度は俺がしっかり支えてあげたい――突き動かされるような気持ちが芽生えていた。