患者の名前は日田康太(ひだ こうた)くんといった。
今回の急変対応では、康太くんの体力を考慮し、チームで当初予定していた処置も同時に実施されたという。
手術は成功し、今後は容体を見ながら薬剤による治療に移行する予定だった。
だが――問題はその薬だった。
世界で唯一、我が社だけが製造している薬。
しかも本来は成人向けで、小児への投与例は少ない。
一真さんのチームは、私が作成した資料を基に投与量やスケジュールを組み立て、副作用の可能性についても丁寧に説明を続けていた。
院長はすぐに了承した。
だが、母親である美玲子さんは首を縦に振らなかった。
彼女は離婚したばかりで、ひとりで息子と病に向き合ってきた。
不安にさいなまれるあまり、薬の副作用ばかりを恐れ「手術で治してほしい」と一真さんにすがりついていた。
しかし、今の康太くんの体に大手術はあまりにも危険だった。
まずは薬で命をつなぎ、体力がついてから手術を――そう説得しても、彼女は完全にパニックに陥っていた。
一真さんは別室で、母親の心に寄り添うように穏やかに話し始めた。
私はその場に残り、静かに耳を傾けていた。
今回の急変対応では、康太くんの体力を考慮し、チームで当初予定していた処置も同時に実施されたという。
手術は成功し、今後は容体を見ながら薬剤による治療に移行する予定だった。
だが――問題はその薬だった。
世界で唯一、我が社だけが製造している薬。
しかも本来は成人向けで、小児への投与例は少ない。
一真さんのチームは、私が作成した資料を基に投与量やスケジュールを組み立て、副作用の可能性についても丁寧に説明を続けていた。
院長はすぐに了承した。
だが、母親である美玲子さんは首を縦に振らなかった。
彼女は離婚したばかりで、ひとりで息子と病に向き合ってきた。
不安にさいなまれるあまり、薬の副作用ばかりを恐れ「手術で治してほしい」と一真さんにすがりついていた。
しかし、今の康太くんの体に大手術はあまりにも危険だった。
まずは薬で命をつなぎ、体力がついてから手術を――そう説得しても、彼女は完全にパニックに陥っていた。
一真さんは別室で、母親の心に寄り添うように穏やかに話し始めた。
私はその場に残り、静かに耳を傾けていた。



