腹黒ドクターの独占欲は、傷心MRを離さない

それは、けして甘いプロポーズではなかった。
けれども、彼らしく意地悪で強引な誓いの言葉であり、何よりも私を求めんとする切実な気持ちにあふれたものだった。

「……わかりました。すぐに行きます」
『ありがとう。待ってる』

彼ともう一度向き合ってみよう。
私は夜明けの空の下を走った。




病院に駆けつけると、一真さんが待っていた。

「手術は無事に成功した。患者は容体を安定させて、今は病室で眠っている」

五歳の小さな体で耐えられる時間は、決して長くなかったはずだ。
その中で難病の症状に冷静に対処し、ここまで持ち直させるなんて――
やはり一真さんは、天才なのだと思う。

彼は処置室を臨める窓の前へ私を案内した。
ガラス越しに見えるベッドには、術後間もない男の子が眠っている。
小さな口に不釣り合いなほど大きな酸素管をくわえた姿に、胸が締めつけられた。

そのそばには、寄り添う家族の姿があった。
一瞬、ご夫婦かと思った。
けれど、男性は初老で、女性は私と同じくらいの年齢だ。
防菌着に包まれていても分かるすらりとした体格と整った目元には見覚えがあった。

美玲子さんさんだ。

私はすべてを察し、一真さんを見やった。
彼は静かに、深くうなずいた。