腹黒ドクターの独占欲は、傷心MRを離さない

「容体が……? なぜだ、最近は安定していたはずだ……!」

声が、完全に医師のものになった。
的確に指示を出したあと、毅然とした表情で私を見る。

「難病指定の患者が急変した。すぐに行かなければならない」
「あの五歳の男の子が……? なら、早く――」

言い終える前に、強く引き寄せられ、息もできないほどに抱きしめられた。

「愛してる。君を絶対に離さない」

耳朶に熱く告げられたかと思うと、頬に手を添えられ唇を重ねられた。
つなぎ止めようとするかのような、熱いキスだった。

「帰ったら、必ず説明する。……待っていてほしい」

名残惜しそうに私を離すと、一真さんは振り返ることなく駆け出していった。
私は、その場にひとり立ち尽くしていた。
嬉しさなのか、戸惑いなのか、自分でもわからない涙が、頬を伝って落ちた。




一真さんを見送ったあとは、しばらく一人で泣いていた。

でも落ち着くと、一真さんの言葉の意味と、これまで彼と過ごした日々を思い返していた。
そうしていくうちに、いつの間にかうたたねしてしまった。

明け方。
端末が鳴り響いたのに驚いて、私は飛び起きた。
一真さんからだった。