腹黒ドクターの独占欲は、傷心MRを離さない

「ちゃんと目は冷やして寝ましたので」
「じゃあ、昨晩はたくさん泣いたってことか?」

図星で何も言えない。

「ごめん、元気づけようと思ったんだ」

私がうつむくと、先生は穏やかな口調になった。

「つらかったな。仕事に差し障るから婚約破棄も突き付けられないんだろ? 代わりに俺が一肌ぬいでやるから――」

次の瞬間、彼の腕がすくい上げるように私の肩に回った。
驚く間もなく、ぐっと引き寄せられる。
白衣越しから、硬い胸板とぬくもりを感じて、やっと抱き寄せられたのだと気づいた。

「あ、あの先生⁉」
「協力してくれるって言っただろ?」

けどこれはいったい……と先生を見上げ、思わず口をつぐむ。
息もかかるほど近くに整った顔が、普段は見せないような、いたずらめいた微笑みを浮かべていた。

「今から俺たちは秘密の恋人同士。話は合わせてくれ」

最後の言葉は低くささやかれて、どきんと胸がはねた。

がちゃりとドアが開く音がした。
振り返ると、広士が驚愕した顔で私たちを見つめていた。