腹黒ドクターの独占欲は、傷心MRを離さない

鋭いヒールの音を響かせ、彼女は去っていった。
私は、その場に立ち尽くした。

胸の中は、さまざまな感情で、荒れ狂っていた。
医者は庶民と違う? そっち世界が非常識で歪みきっているだけじゃない。
馬鹿馬鹿しいと半ばあきれる。でも――

『あなたはね、ただの道具なのよ』

その言葉だけが、頭から離れなかった。
違う……。一真さんは、私をそんな都合のいい存在だなんて思っていない。
そのとき、メッセージの着信音が鳴った。
私の不安を吹き飛ばすその内容は、一真さんからのプライベートなお誘いだった。

【ディナーデートを仕切りなおさせてほしい。俺が空いている日を教えるから、予約を――】

嬉しくてすぐに返信する私には、彼を信じる気持ちしかなかった。