色褪せて、着色して。Ⅶ~カンパニュラ編~

 本当にバニラは恐ろしい…
 妖精だからかな。人の心が読めるようだ。

 顔が赤くなってないだろうかと手を頬にあてる。
 隣に座っている太陽様はどうやら、気づいていないようだ。
「いやあ、俺が仕事の間。色々あったようで…」
「ええ…どこから説明していいのやら」
 半袖・短パン姿の太陽様を見ていると。
 なんだか不思議だ。
 常に騎士団の制服を着て、すぐに居なくなってしまうから。
 また目を離したすきに、いなくなってしまったらどうしようと思ってしまう。

「秘密の館のお手伝いの子たち、卒業したんですね」

 太陽様はカップに入った飲み物を一口飲んだ。
「…そうですね。カイくんやサンゴ様もいなくなってしまいました」
 一言。
 自分で口に出して、酷くさみしいと感じた。

 この国に電気はない。
 テーブルに置かれたランタンの光が不気味に見える。

 対面ではなく、隣に座ってしまったというのに。
 太陽様は私を気にすることもなく。
 一切こっちを見ようともしない。
 やっぱり疲れているのだろうか。
 ぼーとしているように見える。

 ホットミルクを一口飲んで。
 再び太陽様を見る。
 異常なくらい、心臓の音がドクドクと鳴っている。
「あのですね、太陽様」
「はい?」
 太陽様がようやく、私の方を見た。
 心臓の音が更に大きくなる。
「あの、太陽様。あの…えっと、ルピナス様」
「ルピナス様?」
 言いたいことが沢山あるのに。
 太陽様のことではなく、とっさに浮かんだのがルピナス様だった。
「あの、ほら。前回会ったときはルピナス様が行方不明になって。それからずっとお会いしてませんでしたよね。だから、その…ルピナス様は大丈夫なのかなあって、えへへ」
 なーにがエヘヘだ。
 自分で言って、キモチワルッと突っ込んでしまう。
 リスのような大きな目が突き刺さるように、こっちを見る。
「ああ。そんなに会ってませんでしたっけ?」
「ええ、そんなに会ってません。一応、ルピナス様はわたくしの生徒でしたので、心配なんです!」
 いや、生徒じゃなくても王子様なんだから心配するだろ!

 さっきから心の中で突っ込みまくっている自分がいる。
 さっきから変なことを言っているというのに。
 太陽様は根っからの天然なのだ。
 一切、突っ込んでこない。
「そうっすねえ。大丈夫っすよ。ルピナス様は、次期国王に決まったんで、絶賛修行中っすから」
「ぜっせん…しゅぎょうちゅう?」
「城にあるはずのない鐘が鳴るっていうのは、次期国王が決まったという合図らしいんすよね。ルピナス様がいなくなった時はマジで焦りましたけど。そういうことらしいっす」
「え?」
 あまりにも、予期せぬ言葉に。
 数秒フリーズした。
「ルピナス様が次期国王なんですか?」
「はい、そうみたいっす」
「え…それは、ローズ様が決めたんですか?」
「いいえ。神様です!」