鉢と灰の事情

 薊原学園の制服は、よくある黒の学ランとセーラー服だった。そろそろ夏服に切り替わる頃合いのある月曜日の朝、生徒達はネイビーブルーのブレザーを着用して登校した。一部の生徒達を除いて。薊原は関東一帯の不良達から畏怖されるチーム『カタワレ』のメンバー達が在籍している。彼らは今回に限っては正規の制服を着ている結果となった。
 いつもビクビク道を譲っては遠巻きに顔色を窺ってくる教師と一般生徒は、カタワレの面々など最初から存在しないかのように振る舞う。向こうからちょっかいをかけてこない限りは手出ししないというのがカタワレのルールにあるので、彼らは舌打ちや歯軋り以上の事ではない。
 生徒達はハッと後ろを振り返り、道を譲った。それは恐怖からではない。現れた女生徒は、よく言えば素朴、悪く言えば地味な容貌の彼女は、一般生徒と同じく紺色のブレザーを着用し、長身で坊主頭の男子生徒を連れて真っ直ぐ自分の教室に歩みを進める。
 カタワレの副総長に「酔客の吐瀉物と変わらん」と面罵し、彼の取り巻きの女子生徒達を「授業中に騒いだ罰」として頭を丸刈りにして朝から放課後まで校内の清掃活動に従事させた烈女とは、その場を目撃していなければ夢にも思わないだろう。