その日は夜になるまで澪さんのアパートに居た。
 暗くなるまで、窓ドアは明けっ放しだった。


 酔狂に二人でちょっと出用のデカいサンダルを履いて、外に出ると、夜の空に星がきらきらと瞬いている。


「零くんは大人になるまで、私と居てくれるかなあ。」

 夜空を見上げて、澪さんが口を開いた。

「居てくれるって?」

「愛想つかして、もうあんたは要らないんだってグレたり」

「グレませんよ」


 僕も空を見上げた。
 

「僕のこと、捨てないで下さいよね」


 自分の声がどうしてか上から落ちてきたみたいな様になって、僕は黙ってその余韻に浸った。


「こういう夜を、生涯覚えている事があるかなあ」


 僕は目を閉じて澪さんの声を聞いた。

 星の気配がする。


「そうですね」


 澪さんが言うなら、こういう夜を、生涯覚えていようと思った。




 
 




おわり