「大体メールのやり取りだけで結婚決めるなんてありえねぇだろ、普通」

「それだけ王子が魅力的だったってことですよ。今の時代は『デジタル社会』です、王子」

「いや、ありえねぇ」

王子はアスカ様を断固拒否。

そして一番の不満を口にした。

「あの顎筋……拒否反応がでる」

アスカ様の外見についてである。

メールでのブリッコと外見のイカつさの不一致が、セイヤ王子は気に入らないのだ。

ブリッコもウザイと思っている。

とどのつまり、彼はアスカ様が嫌いなのである。

「シッ!アスカ様がどこかで聞いておられるやもしれませぬ…」

「ジィヤ、怯えすぎ」

慌てるジィヤに、王子はハァと溜息をついた。

「ヲトメ国まで聞こえねぇよ。どんだけ地獄耳なん…」

「ぅちのこと、呼んだぁ〜」

何者かの声が王子の言葉を遮った。

「「ハァッ!!!」」

王子とジィヤは勢いよくその場に立ち上がる。


襖に移る影…。

二本の図太い触覚のようなものが、ユラユラと不気味に揺れている。

「誰だッ!!」

「もォーッアスカちゃんだよぉ
セイヤに会いたくて、ここまで来ちゃったぁアハッ」

勢いよく襖を開け、ニヤリと不気味に微笑むアスカ様。

触覚のようなものは、おさげだった。

「おい、勝手に呼び捨てすんな…」

「ぁッおさげ、ダサイでしょォッごめんねぇ
ウチ、なにげ有名だからぁ、変装しなきゃ人が集まっちゃうんだぁ
まぁぢ、大変」

またまた言葉を遮り、アスカ様は恥ずかしそうにおさげをイヂリながら甘ったるい声を出す。

「殴りてぇ…」

王子は拳を強く握りしめ、フルフルと震わせた。

しかし『あいつに触れたくない』と、なんとか理性を保った。