超能力持ち令嬢ですが冷徹理屈屋公爵に「その力を貸してくれ」と言われて偽装結婚することになりました

「ここが占い師オニキスの館……」

シャルロットが馬車の窓から眺めながら呟く。

占い師オニキスの店は、高級店街の端にあった。
レンガ造りでこじんまりとしているが、神秘的な雰囲気のある外観だ。

「さあ、行きましょう」

赤い髪のウィッグを被ったシャルロットは、目元だけの仮面ーーマスカレードマスクを着けた。
テオドールの関係者とバレないよう、念のため変装をしているのだ。

(お忍びで訪れる客はマスカレードマスクで顔を隠していると噂好きのマダムが言っていたから、怪しまれることはないはず)

「馬車から出たら僕は護衛、シャルロットは貴族のお嬢様の設定だからね」

ユーリは護衛役なので顔を隠すことはしていないが、伊達眼鏡をかけて髪をオールバックにしている。
普段と全く印象が違うため、気付かれることはまずないだろう。

「ええ、気をつけま……気をつけるわ」

先に馬車から降りたユーリが、シャルロットに手を差し出してエスコート。

重厚な扉から店内に入って突き当たりにある扉を開くと、お香の匂いが漂って来た。