超能力持ち令嬢ですが冷徹理屈屋公爵に「その力を貸してくれ」と言われて偽装結婚することになりました

「その時に嗅がされた薬品と同じにおいが、テオドール様からします」
「え!?」
「カティア、その薬はどんな効果があるの?」

ユーリがカティアに尋ねる。

「頭がぼんやりする作用があると医師から聞きました」
「拉致する時に騒がれないためか」
「テオドール様も拉致の時にその薬を使われたとしたら、あのテオドール様は本物なのでしょうか……」

シャルロットがテオドールの方を見やると、彼は捨てられた子犬のような、悲しげな表情で佇んでいる。
ユーリはテオドールの様子を見つつ、またカティアに尋ねた。

「その薬品には人格を変えるような効果はあるのかい?」
「いいえ。セシュネという植物が原材料で、病院で患者を落ち着かせるために使用される合法の薬だそうです」
「なるほどね」

相槌を打ったユーリが、にっこりと笑顔を作ってテオドールの方を向く。

「テオ、疑って悪かったよ。とりあえず執務室に行こう」

すると、テオドールはすぐに朗らかな笑みを浮かべた。

「分かってくれてうれしいよ! 久しぶりにゆっくり語り合おうじゃないか」
「ああ」

ユーリはテオドールを執務室の方向へ促しながら、カティアに耳打ちをした。

「フィリス国家保安警察本部にいるテオの部下に、薬品について伝えてくれ」
「わかりました」

カティアはシャルロットに軽く頭を下げてから、玄関へ歩き出した。
カティアを見送ったシャルロットがユーリの後ろについて執務室に入る。

(ユーリ様の機転で、テオドール様を視る環境が整ったわ!)