本日より、弊社社長と疑似子育て始めます


彼はきっとまだ帰宅していないだろう。途中、スーパーで購入した食材で夕食を作って待っているつもりだった。エントランスをくぐり、コンシェルジュに会釈をして通り過ぎる。

ラウンジにいる男性の姿を見つけた瞬間、鼓動が大きく跳ね上がった。

「おかえり。野々花」
「一哉さん……!」

野々花を待ち構えていたのは、十日ぶりに顔を会わせる最愛の人。驚いて足を留めた野々花に、一哉はゆっくりと近づいてくる。

「本当は一緒に帰ろうと誘いたかったんだが、君は断るだろうと思って。先回りして待ち伏せしてみた」

そう言って野々花の手を取り、指を絡める。まるで待ちきれなかったと言わんばかりの一哉の言動は野々花の気持ちを高ぶらせ、心臓を甘く疼かせた。

そのままエレベーターホールへと促され、ふたり一緒に玄関の扉をくぐる。バタンと音を立ててドアが閉まった瞬間、痛いほどの抱擁が待っていた。