本日より、弊社社長と疑似子育て始めます


会場が一斉にざわめき、シャッター音が鳴り響く。

「それは、婚約という形でよろしいでしょうか? お相手の女性社員は、今日出席されていませんか?」
「はい。そう受け取っていただいて構いません。彼女は本件の当事者ですが、本人のプライバシー及び安全を考慮して出席は差し控えております。また、彼女個人への過度な取材は控えていただくようにお願いします。この会見は根も葉もない記事への遺憾の意を表明するとともに、彼女を守るために開いたものでもあります」
「白河社長は、これまで頑なに表に出てこられない印象がありましたが、今回の会見に踏み切ったのは、婚約者の女性を守るためだということでしょうか」
「そうですね。彼女は私にとって、なによりも大切な存在なので」

これまでは感情を廃した声で淡々と答えていた一哉が、初めて個人的な意見を発した。それだけでなく、ずっと鋭い眼差しだった目元を和らげ、まるで目の前に野々花がいるかのように甘く微笑む。

すると会場の熱気は一気に上がり、テレビ画面が眩しくなるほどフラッシュが焚かれた。きっと今日の会見の見出しに使われるのは、この一哉の写真に違いない。