みんなでリビングに移ると、ほどなくしてインターフォンが鳴る。母と玄関へ向かうと、代替わりしたという河邑の息子さんが大きな入れ物を運んできてくれる。
「亜子、俺が運ぶよ」と大和が顔を出すと「あれぇ、有馬先生んとこの」と目を丸くする。
「はい。お久しぶりです」
「ほんと、久しぶりだぁ。立派になられて……いまこっちに帰ってきてるんですか?」
「近くの病院で働いてます」
「そうですか、そうですか」
まるで拝むように手を合わせると、「毎度どうも」といって去っていく。
「おじさんそっくりだね」と私が言うと、「それ俺も思った」と大和が言う。顔だけでなく料理の味もそっくりそのままで、鰻のフルコースを堪能する。
大和は運転があるのでお酒は飲まなかったが、父は彼と乾杯したかったらしい。今度は泊まりに来なさいと、一緒に飲もうと誘っていた。
食事が済むと、母が昔のアルバムを持ってきてそれをみんなで見る。和花が生まれてから我が家では昔のアルバムを開くことはなかった。まるで兄妹のように育った私たちだから一緒に写った写真があまりにも多すぎて、禁断の書かのように押し入れ深くに封印してしまっていた。
「これママ?」
「そうだよ。こっちが大和」
黒髪の利発そうな男の子。改めてみるとやはり和花によく似ている。
「この人は?」
和花が指さす。
「この人は……」
大和のお父さんだ。とてもいい先生ではあったけれど、大先生とは違い若先生は仕事とプライベートをきっちり分けるタイプの人だった。大人になった今ではそれが普通のことだと分かるけれど、子供の私には近寄りがたい感じがして少し怖かった。
「この人はのんちゃんのじいじだよ」
「のんのじいじ? ということはぁ、大和くんのお父さん!」
「正解!」
「じいじ、お医者さんなの?」
「そうだよ、今度会いに行こうな」
認めてもらえるだろうか。ふとそんな不安が過る。ただの幼馴染の私が有馬家の嫁としてふさわしくないのは自覚している。現に大和のお母さんのご実家も開業医で、お兄さんの婚約者も医師だと聞いた。
「それより先にごあいさつに伺わないとだよね」
「そうだな」
どこかのんびり構えている大和。私の両親への挨拶を終えて気が抜けてしまったのだろう。気持ちも分からないではないが、まだ終わったわけではない。私たちの話を聞いていた母が口をはさむ。
「ふたりとも。のんちゃんはウチで預かるから、有馬先生ご夫妻にも早くごあいさつしてきなさい」
「はい」と二人で返事をする。おしりを叩かれて大和は重い腰を上げる。

