水族館を出ると、そのまま浜辺に降りてレジャーシートを敷く。風もなく、気温もそれほど高くはなくて過ごしやすい。
丸く座って早起きして作ったお弁当を広げる。
「すごくうまそう! でもこんなにたくさん、大変だったろ?」
「ううん、作るの楽しかったから大丈夫! 調子に乗ってたくさん作っちゃったから遠慮なく食べて!」
「ありがとう、いただきます」
「召し上がれ」
和花がそう答えてお手拭きと飲み物を渡す。それからみんなで唐揚げを頬張っておにぎりを食べる。タコのウインナーは胡麻で目をつけて、旗のついた楊枝を刺しておいた。大和が興味深そうに見つめている。
「こういうの亜子らしいよな。なんでもちょっと可愛くするの。卵焼きもハートでしょ、これ」
「うん、ハート。でもこれくらいはみんなするよ。手の込んだキャラ弁とか作る保護者も多いし……あ、でもありがとう。気付いて褒めてくれて、嬉しかった」
子供のためにかわいいお弁当をつくる。そんな当たり前になってしまったことを褒めてもらえるのは嬉しい。
「あと俺これ好き。カボチャとクリームチーズ? レーズンとナッツが効いてて美味しい」
「よかった。大和の好みがよく分からなくて、私と和花の好みのお弁当になっちゃったから少し心配だったんだ」
しかも、こんな庶民的なラインナップで少し申し訳ないとすら思っていた。例えば、ローストビーフや伊勢海老、蟹の甲羅に入ったグラタンとかキャビアとかフォアグラとかトリュフとか、そんな高級なものはひとつも使っていない。
「全部旨いよ! ね、のんちゃん」
大和が和花に笑顔を向ける。
「ママのお弁当おいしいよー」
「ねー」と、声を合わせる。ふたりから嬉しい言葉をもらったら、胸がいっぱいになってしまった。目頭が熱くなり、じわりと涙が滲む。
いつも当たり前のように二人で食べていたこのお弁当を三人で食べると言うことがこんなにも特別な時間になるなんて思ってもみなかった。

