恋煩いの処方箋

 八時ピッタリにインターフォンが鳴る。和花は真っ先に駆け寄る。通話ボタンを押して「はーい! 今いきまーす」と返事をする。お気に入りのポーチを肩にかけ、階段を降りていく。
玄関先で大和の声がする。私も軽い足取りで階段を下りる。
「おはよう、亜子」
ネイビーの半袖シャツに白いコットンパンツ。皮のスリッポンシューズを履いている。ハイブランドのネックレスとブレスレットが目を惹いて、オシャレ上級者といった感じがする。私たちのワンピースは二人合わせて五千円もしない。隣にいて、大丈夫だろうか。
「なんか大和、都会の人って感じだね」
「褒められてるってことでいいのかな?」
「もちろん……」
 言い淀んだ私の代わりに、「先生、かっこいい」と和花がはしゃぐ。
「のんちゃんもかわいいよ。そのワンピース、ママとお揃いかな?」
 和花を抱き上げて、私に視線を移すと「その色、亜子にすごく似合ってる」と褒めてくれる。
「ありがとう。大和もすごく素敵だよ」
「よかったーめちゃくちゃ気合い入れてきたんだ。亜子とのんちゃんにかっこいいって思ってもらいたくて」
 大和も私と同じ気持ちだったと知れてホッとする。これは私にとって初めてのデート。そして、家族にとって初めてのお出掛け。
私の車からジュニアシートを取り外して大和の車の後部座席に取り付ける。
「シュッパーツ!」
和花の掛け声と共に車はゆっくりと走り出す。ハンドルを握る大和はとても頼もしく見えた。発信も停止も緩やかで安心して乗っていられる。
 なんでも器用にこなす大和はやっぱりとてもカッコいい。高校生のスポーツ大会での優勝も文化祭での受賞も、大和のリーダーシップのおかげだとみんなが言っていたし、私の成績が上位だったのも彼がいつもそばで教えてくれていたおかげだ。市役所に入職できたものも、和花がかわいいのも、みんな大和がいてくれたから。
さっきまではしゃいでいた和花はいつの間にか寝てしまった。途中のサービスエリアで起こしたけれど、全く起きる気配がない。
仕方なく、大和と交代でトイレ休憩を取る。