「……今だ!!行け!!」
地面に着地しそう叫ぶと、少女はハッと顔を上げ、それからコクンと頷いて見せた。
……納得なんてしていない。
……これが正しいなんて思っていない。
でも少女の《愛しいモノを守りたい》と願う、強い想いだけは……叶えなくてはいけない気がした。
「……私、人間は嫌い。でも貴方の《弱い優しさ》は……嫌いじゃなかったよ」
そう言って少女は優しく微笑むと、自らの命を注ぐために結界の泉へと向かって飛んで行く。
ドラゴンが少女の行く手を遮ろうと懸命に手を伸ばすが……もう間に合わない。
引き留めようと必死に手を伸ばすドラゴンの脇をスッとすり抜けると、少女は結界の泉の上で振り返った。
少女が……愛おしそうにドラゴンを見つめる。
でもそれはほんの……瞬きをする位に一瞬の事で、少女はそっと瞳を閉じると……愛しいモノを守るために、結界の泉へと飛び込んだ。
少女の小さな体が青く深い泉にゆっくりと沈んでいき……次第に見えなくなっていく。
すると泉から眩い光が放たれ、その光は薄暗い森を照らした。
《グオオオオ~ン!!》
その瞬間、ドラゴンの悲痛な叫びが森に響いた。
眩い光が森を覆い尽くし、少女の命が森を守るかの様に優しく森を包み込む。
……これで結界は守られた。
……彼女の命と引き換えに。
光は次第に消えていき、森はいつもの静けさに包まれ、俺の手に握られていた翡翠の剣も淡い光となって消えていく。



