「……どうかしたのか?」
そう言ってジルが眉を顰めたまま、不審な目で俺を見ている。
「小さな女の子が目の前に浮いてんだよ!あ、あれだよ!アレ!!よく絵本とかに載ってる妖精みたいなヤツ!!ほら!ここっ!!」
アワアワとしながら目の前の少女を指差すと……二人の冷たい視線が突き刺さった。
「お前……大丈夫か?」
「……ロイ?」
ジルとセリアはまるで変人でも見るかの様な冷たい瞳で俺を見つめる。
「そんな変態を見る様な目で見るなぁぁ!!幻覚とかじゃなくて本当にここに居るんだってば!!」
しかしどんなに必死に目の前の不思議な少女の存在を訴えても、二人は心配そうに俺を見つめるだけだ。
「……う、嘘だろ。だって……本当に……ここに……」
そう言ってパタパタと宙に浮く少女を見つめる。
……俺にしか見えないのか?
それとも……本当に幻覚?
「……つ、疲れてんのかな」
自分がオカシイのではないかと思い、自嘲気味に笑って頭を掻いたその次の瞬間。
「幻覚なんかじゃないってば!!」
その怒声と共に、鼻に鈍い衝撃を受けた。
「……ブッ!!」
その突然の痛みに鼻を押さえたまま仰け反る。
どうやら目の前の少女に思いっきり鼻を蹴られた様だ。
……小さいくせになかなかのパワーだ。
痛みに眉を顰め、今にも鼻血の垂れそうな気のする鼻を押さえていると……二人の視線を感じた。
二人は茫然と俺を見つめたまま、ピクリとも動かない。
……はいはい、どうせ変な奴だって思ってるんだろ?
心の中でそう吐き捨て、ケッと小さく笑う。



