……そして……《今》に至る。
二日もこの悪夢の様な森を彷徨って……今だに出口は見つからない。
……まさに迷いの森だ。
これまでほとんど休み無く歩き続けてきたが、一向に出口は見つからない。
それどころか何度も同じ場所を回っている様な気がする。
どこもかしこも同じ景色で、全く変わり映えがしない。
ずっと真っ直ぐ歩けばいつかは森を突きぬけられるという安易な考えは、どうやら改めなければいけない様だ。
「……腹減ったな」
そう小さく呟き、ギュッと膝を抱える。
すでに二日、何も食べていない。
水は時折小さな小川や池を見つけて飲む事が出来たが……食事は出来ていなかった。
森を歩きながら食べられそうな物を探したが、どれもこれも妖しく胡散臭いショッキングな色をしたキノコやら果実やらで……流石の俺でも食べる気にならなかった。
……このまま死んでしまうのだろうか。
そんな考えと共に《ギュルルル》と腹が切なく鳴いた。
……もうどうでもいい。
……腹が減って……何も考えたくない。
膝を抱えたまま全てを諦めた様にそっと目を閉じた……その時だった。
(……たす……けて)
どこからか微かに声が聞こえた様な気がした。
そっと俯く顔を上げ、キョロキョロと辺りを見回すが……何もない。
「……なぁ?今、声が聞こえなかったか?」
そう二人に問い掛けると、二人は顔を見合わせ首を横に振った。
……気のせいか。
ついには幻聴まで聞こえる様になったらしい。
……もう完璧にダメだ。
はぁっと大きな溜息を吐き、少しでも休もうとまた目を閉じたその瞬間。
(……お願い……助けて!!)
今度は確かにハッキリと聞こえたその声に、ハッと目を開くと……目の前に小さな《少女》が浮いていた。
小さな体に細い手足。
ピンクと白の花の飾りを付けた緑色のフワフワの髪。
それからこれまた愛らしい顔が付いている。
そして背中には淡い光を放つ透き通る様に美しい四枚の羽が生えていて、それをパタパタと懸命に動かして宙に浮いている様だった。
「……何……この生き物」
思わず声を震わせそう呟くと、小さな少女は嬉しそうに笑った。



