それから十分程走った所で振り返ってみるが、ドラゴンの姿は見えなかった。
そこには鬱蒼と生い茂る木々と、褐色の少し湿った土……それから微かに差す日の光しか見えない。
……どうやら追っては来なかった様だ。
「た、助かったぁ~!!」
ホッと安堵の息を漏らすと、そのまま力尽き崩れる様に地面に座り込む。
「あの光……何だったんだ?」
そうジルが問い掛けると、セリアは《ああ》と言いたげに頷いて、地面にしゃがみ込んだ。
そして地面に転がっていた灰色の石を手にすると、それをグッと握り締める。
「さっきのはただの石に少し魔力を籠めて投げただけなんだけど……うまくいくとは思わなかった。さっきまで魔法、全然使えなかったから」
そう言うとセリアは手を広げ、何の変化も見せない灰色の石を見つめ首を傾げた。
「……やっぱり……また使えないみたい」
セリアはそう小さく呟くと、不思議そうに手にした小石を見つめている。
「あの場所が《特別》ってことか?」
「う~ん……分かんない」
俺の問いにセリアは短く答え困った様に笑った。
「……先に進もう。ここに居ても仕方がない。早く森を抜けるぞ」
そう言ったジルに促され、また三人で深い森を歩き続けた。



