「ちょっと待ったぁ!!」

慌てて二人を呼び止めると、二人は歩く足を止め俺を振り返った。

「森を抜けるって、迂回するんじゃなかったのか!?」

「わざわざ迂回するの?こっちの方が早いのに?」

俺の叫ぶような問いにセリアは不思議そうに首を傾げる。

「だ、だって……森の魔物めっちゃ強いんだぞ!?危なくないのかよ!?」

そう言って深く暗い森を指差すと、二人は困った様に眉を顰めた。

……我ながら情けない。

加護により力は解放されたらしいが、全くと言っていいほど実感が無い。

体で特に変わった様な所も見当たらないし、具体的に何が強くなったのか全然分からなかった。

……いきなり強い魔物に襲われたりしたら……

そんな事を考えながら蒼褪めていると、セリアは俺を真っ直ぐに見つめた。

「大丈夫。今のロイならこの森を抜けられるよ。私を信じて?……ね?」

そう言ってセリアはとても真剣な目をして俺を見つめる。

それはまるで俺の全てを見透かす様な不思議な瞳で、思わずゴクリと息を呑んだ。

その不思議な瞳を見つめたまま、決意を固める様にグッと拳を握り締める。

……しっかりしろ!!

……男だろ!!

そう心の中で自分を奮い立たせると、セリアに答える様にコクリと頷いて返した。

「……分かった。行こう!!」

そう言ってグッと拳を握り締めて見せると、セリアは嬉しそうに優しい笑みを浮かべた。

内心はとても怖かったが、セリアの前でこれ以上情けない姿は晒したくない。

「よ~し!!行くぞ!!」

さっきとは打って変わってスタスタと森に向かう俺の姿を見て……ジルがまた面白そうにクスリと吐息を洩らすのが分かった。