「はい!これでおしまい!!……次はロイだよ?」
そう言ってセリアは俺を振り向くと、また可愛らしい笑みを浮かべた。
「……え?」
小さく声を漏らしあたふたと戸惑っていると、セリアは静かに俺に近付き、そして俺の右手に手を触れた。
「……血が出てるから」
そう言ったセリアに腕を掴まれそっと手を開くと、そこには強く握り締めたせいでついた爪の痕が見える。
そこから微かに血が滲み、俺の手を赤く染めていた。
セリアがさっきジルにやったのと同じ様に俺の手の上に自分の手を翳すと、彼女の白い手から緑色の不思議な光が放たれる。
それと同時に手の平に熱さを感じ、そして見る見るうちに傷が塞がっていくのが見えた。
……凄い。
……こんな魔法を見たのは初めてだ。
最近は世界中の魔力が減り、魔術を使える人間もどんどん減っていた。
そう魔力が底をつき……この世界から魔術は消えようとしている。
しかしそんな事よりも、セリアに触れられている場所がむず痒く感じ、堪らなくくすぐったい。
よくよく考えれば女の子に触れた事なんてほとんどないし……むしろ初体験の域だ。
そんな実にくだらない事を考えながら顔を赤く染め、セリアを茫然と見つめていると、不意に……とても嫌な気配を感じた。
……嫌な予感がする。
顔を上げチラッと視線を移すと、そこには……ニヤリと不敵な笑みを浮かべる男が見えた。
「セリアに見惚れるのもいいが……急いでいると言っただろう?」
ジルのその言葉に、途端に物凄く恥ずかしくなった。
「み、み、み、見惚れてなんかない」
そう言ってフイッと顔を背けポーカーフェイスで乗り切ったつもりだったが……どうやら失敗したらしい。
ジルはそんな俺の反応を見て面白そうにクスクスと笑っている。
……くそっ!!
なんだか遊ばれている気がしてムッとしたが、楽しそうに笑うジルの姿に少しホッとした。
セリアのおかげでジルの体調はかなり良くなった様だ。